代行秘書 ときどき レンタル彼女⁉
《仮面を剥がす指、その時》



HIDAKA本社の勤務は思った以上に大変だった。
秘書課の人たちに教わりながら膨大な仕事量をこなしていくだけで精一杯。
細かすぎるマニュアルも鬼のようにデスクに並んでる。



本当にコレ1人分の仕事量なの!?
早速脳裏にかすむブラック企業への疑い。



「最初は大変だろうけど慣れるまでの辛抱だから頑張ってね」
「副社長はああいう人だから」
「何かあったら1人で抱え込まないで」
と声をかけられる。



正直覚える事がありすぎて副社長がどうのこうのまでは頭が回らない。
とにかく1日でも早く秘書を全うしなければ。



が、しかし。



鳴るわ鳴るわの内線オンパレード。
「深山、来い」の一言で呼び出される。
しかも毎回小さな雑用。
えぇ、秘書ですから。
何でも致しますよ。



でもそれ、一度に言えません?
分けて言う必要ありますか?
副社長室のドア、何回ノックしただろう。
毎度毎度涼しい顔して「これ頼む」って。
ムカつくけどこっちも笑顔で対応するしかない。



ドキッとした。
資料室での至近距離。
見上げたらすぐ顔があるんだもん。
倒れてくるファイルを押さえて守られる。
こんな緊迫した状況でも、つい見惚れてしまっていた。



揺れるまつ毛、高い鼻筋、薄い唇……
吐息がかかるほどの距離で見つめ合う2人。
そっちから体を離してくれて良かった。
しばらく動けずに居た自分が情けない。


「俺だけの最高の秘書になれ」ってどういう意味!?
契約通りの関係で居ろって意味だよね!?
副社長専属の秘書。
誰よりも最高な秘書、なってやろうじゃない。



この私に、完全に火つけましたね?





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