チョコレートは恋に等しい

ショーウィンドウに飾られた、チョコレートの数々。
鼻をくすぐるカカオの香り。


幸せな気分でいっぱいだ。


私は年に一回開催されるチョコレート展に来ていた。


もう一度辺りのショーウィンドウを見れば、そこには余計なデザインは削ぎ落としたと言わんばかりのシンプルな四角い一口サイズのチョコレートから、技巧を凝らしチョコレートで曲線を作り出し繊細で立体的なチョコレートまで様々なものがある。



「ほんと、お前チョコレート好きだな。」



呆れたような雰囲気も含むが、どこか優しくて保護者感を拭えない声が後ろから掛かった。



チョコレート展ではイートインやテイクアウトのものもあって、いろんな種類を食べたい私はシェアをしてもらうために付き添いを連れてきた。



甘いものが大丈夫で、長い買い物にも不満を言わずに快く付き合ってくれる人なんて今ショーウィンドウのチョコレートを物珍しそうに見ている同期のこいつくらいしかいない。


同期の英梨（えり）には誘った瞬間に間髪入れずに断られた。


「は、チョコレート?私甘いの無理。しかも香織（かおり）買い物だと何度も同じところ行ったり来たりするの、耐えられない。そういうわけだから今度辛いの食べに行く時にでも誘って。」


と言われた。英梨は意地悪だ。私が辛いの苦手なこと知ってるくせに。


英梨に断られた私は、何だかんだいつも私に付き合ってくれる面倒見のいい谷（たに）を誘った。



「好きだよー、そりゃあ。谷はわかってて付いてきてくれたんでしょ？今更じゃん。」



あ、あれもおいしそうとテイクアウトのチョコレートたい焼きの列に並ぶと谷は「まぁねぇ。」と答えた。