堅物社長にグイグイ迫られてます
「いいか。引き受けたからにはしっかりとやれよ」

「はい。もちろんです」

「今考えた設定、本番で忘れたら来月の給料を減らすからな」

「そ、そんなっ!」

「冗談だよ」

そう言って御子柴さんがイスからすっと立ち上がる。

「そろそろ時間だ。行くぞ」

ビシッとしたスーツを着こなす御子柴さんは腕時計を確認すると、出口へと向かって店内を足早に歩き始める。

「あ。待ってください」

私も急いでイスから立ち上がり御子柴さんの後を追いかけて歩き出す。と、そこでイスの上にハンドバッグをうっかり置き去りにしていることに気が付き慌てて手に取った。危ない。忘れていくところだった。

このあとの予定のことを思うとやっぱり少しだけ動揺しているのかもしれない。

御子柴商事の創立記念パーティーに参加して御子柴さんのお父さんの前で上手に彼女役をこなすことができるのか。正直、昨日は緊張してよく眠れなかった。

不安な気持ちが強いけれど、それでも御子柴さんのために頑張らないと。
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