堅物社長にグイグイ迫られてます


御子柴さんのマンションから職場である御子柴設計事務所の入るビルまでは歩いて十五分ほどの距離にある。

わりと近いとはいえ方向音痴な私のことだから絶対に迷子になると思い、御子柴さんのマンションから初出勤となる今日は御子柴さんと一緒に出勤しようと思った。けれど、七時頃に目を覚ますと御子柴さんはすでに出勤準備を終えており早々と一人で家を出て行ってしまった。

ということで、置いて行かれてしまった私はスマホの地図アプリで経路を確認しながら職場までの道のりを歩くことにした。

何回か道を間違えたけれど、余裕を持って家を出たこともあり職場には就業開始時間三十分も前に着くことができた。少し早過ぎたし、道も何となく覚えたから明日はもう少し遅い時間に出ても間に合いそうだ。

「おはようございます」

午前八時。御子柴設計事務所の扉を開けた私を佐原さんが笑顔で迎えてくれた。

「おはよう雛子ちゃん」

ちらっと御子柴さんのデスクに視線を送るけれどそこに御子柴さんの姿はなかった。私よりもだいぶ早く家を出たはずなのにまだ出勤していないのはおかしい。どこか他に寄る場所でもあったのかな……。
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