空白は薔薇で埋めて
はじめは、ほんとに些細なことだったと思う。約束の時間から5分遅れる。記念日はほとんど忘れてる。そのわり何でもない日にプレゼントを贈ってきたりする。あの花束だってそうだ。突然渡されてびっくりしたのを覚えている。最近では、「会えない」と言われる週末が増えてきて、会えたとしてもほとんど上の空。
これだけ条件が揃ってしまえばもう、疑わずには居られないだろう。そう、私は多分・・・

「浮気されてると思うの。」
つい愚痴っぽくなって長くなってしまった話をそう括り、私は運ばれてきた紅茶をすする。お昼時から少し外れたカフェは人が少なく、他人に聞かれる心配をせずに相談ができる。
「ちょっと黒いわね。その話を聞く限り、希美の彼氏は浮気をしている可能性が高いと言わざるを得ないわ。」
浮気のことを誰かに話したかった私は、美保を呼び出した。美保とは中学からの知り合いで、今ではなんでも話せる親友だ。心優しいこの友は、平日昼下がりの呼び出しに文句も言わずに来てくれた。
「せいぜい感謝する事ね。」
偉そうに笑いながら言ので、
「どうせ年中暇人でしょ。」
と返してやった。実は美保は無職・・・という訳ではなく、漫画家をやっているのだ。しかも得意としているジャンルは恋愛。この手の話において、心強いことこの上ない。
「やっぱそうなのかなー。」
ズバッと言われたその返答に、机に突っ伏してそう呟く。私の彼氏であり、今浮気の疑惑がかかっている航平は、大学で知り合った。サークルが同じで、都市が近かったこともあり直ぐにうちとけた。それが次第に恋愛に発展していった、というよくあるパターン。告白は航平から。だけど私も好きだった。
それから約3ヶ月。思えばそれだけしか経ってないのか、というほどの時間だけで、浮気など起こるのだろうか。これはもう、最初から好きじゃなかったんじゃないか、と疑ってしまうくらいだ。
「そんな根底疑うくらいならもう末期よ。別れちゃったら?」
美保にそう言われて、それもそうだな、と妙に納得してしまう私がいる。こんな気持ちになるぐらいなら、もう付き合ってなくていいのではないか?
「そうね。考えてみる。」
次の結果で全てを決めよう。私はそう決心した。
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