卒業します
『もうすぐ伺います。』

車の中からメールして、到着を知らせる。

『待ってるよ。』

絵文字もなくてシンプルだけど…………

温かい言葉に嬉しくなる。

門の前に車が止まったタイミングで、鍵が開いて

中から多岐さんが迎えてくれる。

「夏苗様、お待ちしておりました。
さあさあ、春人坊っちゃんもおまちかねですよ。」

変わらない笑顔に癒されながら

「お邪魔します。
この間は、本当にご迷惑をおかけしました。
これ、少しですけど………。
母も大好きなお菓子なんです。」と挨拶して手渡す。

「あらあら、お気遣いありがとうございます。
では、早速お出ししますね。」と言われ

「えっ!ダメです。
だってそれ、多岐さんに買って来たんですから。
多岐さんが休憩の時に、一人でゆっくり食べて下さい。」

「えっ、でも…………。
私なんかが頂くなんて……………」

玄関で押し問答していたら

「いつまでも上がって来ないから、心配して来てみたら
まだこんな所で話し込んでいたんだね。
多岐さん。
せっかく夏苗ちゃんが、多岐さんにって持って来てくれたんだから
遠慮しないで貰うと良いよ。
彼女には、さっき美味しいケーキを買ったから大丈夫。
それより後で、温かい飲み物をお願いね。」って

優しい笑顔で二人の間に入って、解決してくれる。

「はい。
それでは夏苗様、遠慮なくいただきます。
本当にありがとうございます。」

二人でニッコリ笑っていたら

「ところで、僕へのお土産は??
いっぱい頑張った僕だから、さぞスゴいお土産だろうね!」って。

えっ!?

春人先生もいるの??

多岐さんのことしか考えてなかったから…………

先生のなんて、何にも用意してないよぅ。
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