君からのヘッドフォン
No.7
私は彼の質問に、答えることなく、本屋を後にした。

隣で歩く伊澄くんはなんだか、嬉しそうに鼻歌を歌っている。


「最近、松下くんと同じしてないみたいだね」

「…まぁね」

「なんかあったの?」


何も知らない松下くんは少し前のめり気味に隣を歩く私の顔を覗き込む。

純粋なその瞳は私を傷つけるのには十分すぎた。


「いろいろ」

「そう、いろいろ、ね?」


含みのある言い方をした私に、納得したのかしてないのかはわからないけど、先程通り、隣を歩き出した。
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