言わせたいくらいに君が好き。
再度腕を掴まれる。大通りから外れた道に連れ込まれ、そこで壁に押し付けられる。
(顔、近い!)
いわゆる壁ドン状態のため、ものすごく顔が近くてドキドキしてしまう。今は誤解をとくことが優先で、そんなこと考えてる場合じゃないのに…!
「好き。琴乃のことが。…ねぇ、お前は?」
「ッっ!」
こんな場面でも恥ずかしくて言えない私。本当に情けない。なく資格なんかないのに視界が涙で歪む。
「なんで、泣くの?さっきのやつが好きだから?俺といるせい?」
「違う!私が好きなのは…」
「好きなのは?…ちゃんと言って。」
尻すぼみになった言葉を更に促してくる。
「……士輝です…」
恥ずかしくて手で顔を隠す。だがその手もすぐに外される。
「よく言えました。」
近かった顔が更に近づいて…。唇が、触れた。甘い甘い、キス。零れそうになっていた涙は、自然と収まっていた。
しばらくしてどちらからともなく顔が離れ、見つめ合う形になる。私はやっぱり恥ずかしくて目を逸らした。
「帰るぞ。」
さっきと同じように引っ張られるが、今度はきちんと手を繋いでいた。
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