君の隣は、空いてますか?
始まりは春の日
始まりは、桜が似合う春の日。
高校入学から1週間ほど経ったある日の事。

少し慣れないバス通学。気合いの入ったスーツや数種類の制服の間の狭い通路を通る。

足を前に出すと、誰かと体がぶつかり舌打ちが聞こてくる。
凄く息が詰まる感じがして、毎日これが続くのかと思うと気持ちがずしんと重くなった。

やっとの思いで一番前の出口が見える位置に来た。定期乗車券をタッチして外に出る。
さきほどまでの息苦しさとは打って変わって、心地よい春風が私の鼻腔をくすぐった。

そのときだ。

私は一人の男子に目が釘付けになった。
イヤフォンをつけて音楽を聴いている姿はよく見かける街を歩いている人らとは何一つ変わらない仕草だった。
だが、彼の周りだけはまるで映画のワンシーンの様で、同じ制服の人も沢山いたのだが、私は彼しか見えていなかった。
・・・というか見ていなかった。

私は多分、その時点で完全に彼に惹かれていたんだと思う。

男と付き合うのが大嫌いな私が。
ちっとも乙女な要素がない私が。


(・・・一目惚れ?)

胸がギュッと締め付けられるような感覚。この感じ、久しぶりだ。

私の頭に浮かぶ一文字の可能性。

それは、 “ 恋 ” 。

こんなに強く自覚したのは初めてかもしれない。

私の高校初めての恋は始まった。
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