あの日交わした約束
「ごめんね…?俺らこそ。時間無いって皆焦ってピリピリしてる」と豊が言った。

「いえ。けど大丈夫!だってミスしたって思ったらへこむかもしれないけどよく考えたらそれもコミで楽しむのが音楽だと思ってます。だから気にせず大胆に堂々とミスしてもいいのかなって…。皆で楽しむことに意味と価値があると思ってますので」と恵美里。

「だよなーそうだよ!皆適度の緊張は必要かもしれないけど気にすることは無いんだよ!皆で楽しめばいい!だから恵美里が復活するとき演奏しやすい環境を整えててやろう?」と徹は言った。

「だなーじゃあ、楽しもっか!」と勝、

「そー言えば…宥と恵美里付き合うことになったんだろ?オメデト」と祐が入ってくる。

「だよなー??オメデト~」と皆に言われてありがとうございますと頭を下げた恵美里。

「うっし!そろそろじゃあ、練習戻るか!」と徹の一言で皆はそれぞれのポジションに戻った。

恵美里は宥の隣に立ちその様子を眺めた。

いい感じに仕上がってるような気がしたし、皆の顔つきが変わり、キラキラしているのを見て恵美里はホッとしていた。

練習が無事終わり、帰り支度を終えると、「恵美里!帰ろっか」と宥は自然と恵美里の鞄を持った。

皆はその様子を微笑ましそうに見守った。

「邪魔しちゃ悪いし、帰ろうか。俺らは」と徹が気を利かせて言うと、豊はえーと言い出す。

豊はそう言いながらも、皆に連れられて帰っていった。

残された宥と恵美里は顔を見合わせて笑いながら、音楽室を後にした。

二人は並んで歩いた。どちらも緊張しているのか、会話はしなかった。

しばらくして間に耐えきれなくなったのか、恵美里が口を開く。

「…手…繋いでもいいですか?」って。

「えっ?…あぁ、うん」と言って差し出された宥の手は大きくて、恵美里の手を包み込むように優しく繋いだ。

気を使い、わざわざ左側に回ってくれた宥は優しく繋ぐとゆっくり、歩幅を合わせながら歩いてくれた。
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