バレンタインのおはなし
「先輩って彼女いましたっけ」
「別にいないけど」
「そうですよね、前の彼女に浮気された挙句何故か一方的に振られてからずっと一人ですもんね」
「なんでお前がその話知ってるんだ」
「私の情報網を舐めてもらっちゃ困りますよ」
だったらいいじゃん、とも思うけど、何故こんなに頑なに受け取らないのか。
そもそも。
バレンタインデーなんてこんな日に、わざわざ向こうから飲みに誘っておいて、期待するなって方がおかしいじゃないか。
なんか今日は気分が良いから、とか、今日はむしゃくしゃするから、とか普段からよく分からない理由を付けて誘う癖が、たまたまバレンタインデーという日に被ってしまっただけなんだろうけど、それにしても。
それにしてもだ。
「先輩はデリカシーがないです...」
「でも好きなの?」
「そうなんですよねぇ」
なんだよそれ、とミヤ先輩が笑った。
ほらその顔。ぶっきらぼうな貴方が、たまにそうやって優しい顔をするから。
好きになっちゃったんだよ。