バレンタインのおはなし
「いつから好きだったんですか?」
「それ聞く?」
だって、気になる。
先輩が仰向けにしていた体をこちらに返したので、ここぞとばかりに身を寄せる。2月なのに、全然熱が引かない。
大きな手のひらが髪を撫でる。
正直覚えてないよ、ととぼけるから、まぁいいかと思い目を閉じた。
「お前が俺を好きになる前からだよ」
意識を手放す瞬間。
そう言って、私の頭にひとつキスをした彼の表情を。
私は、まだ知らない。
[完]
