福山先輩、あのね。

あの、よく通る声がした。

と思ったら次の瞬間にはもう、わたしと上級生の間を割るように、彼がいた。


「やめろよ。この子、下級生だろ」


おっきな背中。汗のにおい。いつもいつも遠くから見ていた福山先輩の後ろ姿が、今、目の前にある。

突然の状況に頭がついていけず、クラクラした。


「何よ、福山カンケーないでしょ」

「こんなとこ見たら無視できねーって」


……空気が、熱い。盾のようにわたしの前に建つ、福山先輩の背中が。すごく熱い。

< 10 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop