福山先輩、あのね。
あの、よく通る声がした。
と思ったら次の瞬間にはもう、わたしと上級生の間を割るように、彼がいた。
「やめろよ。この子、下級生だろ」
おっきな背中。汗のにおい。いつもいつも遠くから見ていた福山先輩の後ろ姿が、今、目の前にある。
突然の状況に頭がついていけず、クラクラした。
「何よ、福山カンケーないでしょ」
「こんなとこ見たら無視できねーって」
……空気が、熱い。盾のようにわたしの前に建つ、福山先輩の背中が。すごく熱い。