福山先輩、あのね。

「ああ、なんだ木下か。いきなり話しかけないでよ。ビックリしたじゃん」

「だってお前、俺が近づいても全然気づかねえんだもん。何を熱心に見てたんだよ」

「べ、別に」


先輩を見ていたことがバレないよう、目をそらしてごまかしたのに、木下はさっきまでわたしが見上げていた方向に視線をやる。


「あ、福山先輩だ」


……まずい。木下は福山先輩の中学からの後輩で、家も近所。バレたら絶対めんどくさいことになる。

そう思ってそそくさと離れようとしたわたしは、けれど次の瞬間、木下の言葉で足を止めた。


「そういえば、もうすぐ校内駅伝大会じゃん? あれに福山先輩も出るらしいぜ」

「えっ……」


駅伝? うそでしょ?
だって福山先輩は……

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