福山先輩、あのね。

上がる呼吸。心拍音。

髪を乱して走るわたしを、沿道の生徒たちが不思議そうに見ている。

走るのなんか、久しぶりで。
地面を蹴るたびに、足がもつれて。
息が苦しくて。
胸が苦しくて。


走りながら、以前木下と陽子が話していた会話が、脳裏に浮かんだ。


『わざわざ駅伝なんてしんどいこと、なんでやるんだろな』

『言えてるー。もっと楽しいこと、いっぱいあんのにさあ』


……ほんとだよね。
もっと楽しいこと、いっぱいあんのに……。

なんで先輩は、そんな必死にがんばるのかな。

なんでわたしは……
先輩に迷惑がられても、この恋をあきらめきれないのかな。


だけど好きで
やっぱり好きで

しんどくても
好きで。



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