マリンスノー
第6話
“俺、凪が好きなんだよね。”

今日、霞くんに言われた言葉が頭の中を占領する。

ベッドにもぐって、お気に入りのテディベアを抱く。
そのぬくもりは、霞くんのものとは違って。
霞くんの腕の中はもっとこう……って!

な、何考えてるの私!!

思い出すだけで顔が赤くなる。

……私、霞くんに告白されたんだ。
生まれて初めてされた告白。
……ドキドキした、すごく。

思い出しただけで心臓がまたドクドク音を立て始める。
こんなにドキドキするなんて。
きっと今、私の顔赤いんだろうなあ。

手の甲で自分の頬に触れてみると熱くて。
それが余計に、私の顔に熱を帯びさせた。


*
「俺、凪のことが好きなんだよね。」

その言葉にびっくりして顔を上げると。
穏やかに笑いながら私に傘を差す霞くんがいた。

私に傘を差しているせいで、雪に浸食されていく霞くんは。
どんどん濡れていって、髪からは解けた雪がしたたれていた。

「か、すみくん?」

「凪が俺の名前を褒めてくれたときから、ずっと凪のことが気になってた。」

「……」

「ここ、俺の家の近所なんだよね。」

どうして、霞くんがここにいるんだろう。

そんな顔をしてるって、霞くんに言われて。
自分の考えていることが表情に出ていることに気がついた。

「凪に好きな人がいること、知ってる。
 俺の恋が叶わないことも知ってる。
 それでも、俺は凪が好きで仕方ないんだ。」

凪がその人のことを好きなようにね。

そう言って悲しそうに笑う霞くんに胸が締め付けられる。

「凪が好きな人を忘れるために、俺を利用してくれない?」

「霞くん……!」

「俺と付き合おう、凪。」

「そんなこと……できない。」

「これは、お願いだよ。」

「……っ。」

「絶対俺のこと好きにさせてみせるから。」

「……。」

「俺のこと、試してみてよ?」
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