夕闇の時計店
「お邪魔します!」

暖簾をくぐって靴を脱ぐと、座敷に上がって畳に敷かれた座布団に腰掛ける。

スクールバッグを傍らに置いて、あるものを取り出した。

「それで、今日はどうしたんだ?」

あとから暖簾をくぐってきた緋瀬さんが聞く。

「今日はー……」

先ほどスクールバッグから取り出したものを掲げた。

「じゃーん!」

ふくらんだ水色のラッピング袋を見て、緋瀬さんは首をかしげた。

「何だ?」

「今日、学校の調理実習でクッキーを作ったんです。たくさん作ったので、緋瀬さんと一緒に食べたくて」

「そうか……ありがとう」

緋瀬さんが優しく微笑む。

「……やっぱり」

「ん?」

立ち上がって、緋瀬さんに近寄る。

背が高い彼を見上げて、高鳴る気持ちを抑える。
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