ほわいとちょこれーと!─幼馴染みと恋するホワイトデー
 13日の放課後。

 私たち3人は近くの大きなスーパーの前で待ち合わせした。


 私が着くとわりとすぐにレイラが来て、それから少し遅れてミサトが来た。


「待たせてごめんね。じゃすぐ買い物しよ!」


 店内にはバレンタインの特設売り場があって、私たちはそこで板チョコとマシュマロやビスケット、それにラッピング用品を選ぶ。


「ね、この型良くない?」

「ミサト、ハートよりかこっちの円い方が大きいのできるよ」

「何言ってんのレイラ!大きさより可愛さでしょ!バレンタインなんだからぁ」


 シリコンの型を前にミサトとレイラが言い合っている。

 それを横目に手作り用コーナーの隣にあるギフト用の市販チョココーナーへ眼を遣る。

 綺麗にラッピングされたチョコの並ぶ棚には中身を紹介するポップが付いている。カラフルなチョコ達は見るからに美味しそう。


(あ…)


 私はその内のひとつに眼を奪われる。

 ホワイトチョコのトリュフ。


 私はチョコの中でも特にホワイトチョコが好き。

 あの見た目にも可愛くて優しい雰囲気が好きだ。


「まぁハートでもいいけど。その分数食べれば同じだし」


 レイラが退いてようやく型問題は解決したようだ。


 そこで二人に声を掛ける。


「ね、ホワイトチョコも作って2色にしたりしてもいいんじゃないかな?」

「でもホワイトはちょっと作りにくいのよね。溶けにくくて固まりにくいし」

「あ…そうなんだ」


 ミサトに一蹴されてしまった。


 結局ハートの型だけカートに追加してレジに並ぼうとすると、

「あ、待って!もうひとつ買いたいものがあるの!」

とミサトが呼び止めた。

 そして、ギフト用チョコのコーナーに向かう。


「ん、これにしよ!」


 しばらく棚を眺めていたミサトがブルーの包装紙に包まれた、中学生のおこづかいには少し高価なチョコを手に取った。


「それは?」


「本命チョコ」


「えっ!」


「ミサト好きな人いたの!?」


 驚くレイラと私にミサトがうふふと笑う。


「えっ、誰、誰?」


 レイラが珍しく食べ物以外のことで興奮ぎみになっている。


「うふふ、ヒミツ♪」

「でも本命がいるなら友チョコとか作らなくてもいいじゃんね?」

「逆よ逆。配るきっかけがないと渡しにくいじゃない」


(…そりゃそうだ)


 私だって友チョコあげるから、とか言わなきゃとても千早にチョコなんて渡せない。

 もう何年もそうやってチョコを渡せないバレンタインを過ごしてきたんだもの。

 ミサトの気持ち、わかるなぁ。
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