転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
　後ろ盾のないリヒャルトを皇太子としたままでいいのだろうかという意見もあるという噂くらいはヴィオラも聞いていた。

（ティアンネ妃ってちょっとザーラと似ているかも）

　前王妃の娘であるヴィオラを追いやろうとしたザーラ。皇妃の息子であるリヒャルトを追いやろうとしているティアンネ妃。二人には、似ている点も多いみたいだ。

「そっか。ティアンネ妃がいたわね……きっと、彼女には注意した方がいいのよね」

　そもそも、ヴィオラがオストヴァルト帝国に向かうことになった理由には、ティアンネ妃の母国であるトロネディア王国との間におこった戦争が大きな理由だ。

　おそらく、イローウェン王国の関係者にいい感情を持ってはいないだろうから、ティアンネ妃の前でうかつな言動はとらないようにしなければ。

「……今は、そんな難しいことを考えなくてもよろしいのですよ。ゆっくりお休みください」

「ニイファも休んで」

「はい、私も休ませていただきます。ヴィオラ様がお眠りになったなら」

　ニイファの優しい手が、ヴィオラの身体にかけられた布団の位置を直してくれる。その優しい手に身をゆだねながら、ヴィオラは考え込んでいた。

（どうして、湖に落ちた時、ニイファはあそこまでしてくれたんだろう……）

　けれど、まだ本調子ではない身体には、リヒャルトとの面会だけで負担だったらしい。あっという間にヴィオラの意識は睡魔に奪われ、その疑問もまた、思考の狭間に消え失せてしまった。

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