秀才男子は恋が苦手。







―――ダメだ。


俺はシャーペンを置き、椅子に座ったまま天井を仰いだ。


千葉が帰った後、気を取り直して勉強を始めたものの…全然集中できない。



“相手に気持ち伝えるのはそりゃ怖いよ。分かるけど、ちゃんと伝えなきゃいけないときもあるんじゃねーの?”


…やめた。もうこれ以上、衛藤のことを考えるのはやめよう。俺には今、やるべきことがある。集中だ、集中!


「…おし」


俺は気合を入れると、改めてシャーペンを持ち参考書を開く。



“亜衣ちゃんの気持ちも、何も分かんないまま逃げ回ってるから、諦められないんだろ?”



…くそっ!


俺は再びシャーペンを置くと、椅子から立ち上がりそのままベッドにダイブした。



あいつ…千葉が余計なこと言ったせいで、全っ然集中できない。



気持ちを伝えなきゃ意味がない?伝えたって意味なんてあるのか。自分の気持ちを相手に無理やり押し付けて、何か意味があるのか?

諦めるために気持ちを伝えるなら、伝えずに諦めた方がいいに決まってる。自分にとっても、相手にとっても。


そうだよ。だって、衛藤が俺のことを好きな可能性なんて、万に一つも…



“私だけ…好きで”



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