秀才男子は恋が苦手。
「…何で、って」
口ごもる俺を、衛藤がじっと見つめている。
…何やってんだ俺。ここまできて何ビビってんだよ。
「…こ、答え合わせ、してなかったから」
「…答え合わせ…?」
不思議そうに首をひねる衛藤。
「…あ…も、もしかして前にやった数Bの演習問題のやつ?それなら…」
「そうじゃなくて」
あぁ、もう何言ってんだ俺。
そうじゃない。俺が衛藤に言いたいことは、そうじゃなくて―――
真っ直ぐに衛藤を見る。衛藤も、戸惑いながらも真っ直ぐな視線を返してくれる。
「…好きだ」
そんな衛藤の瞳に吸い込まれるように、自然とそんな言葉が零れていた。
「俺は、衛藤のことが好きだよ」
衛藤が瞬きもせずに俺を見ている。…というか固まっている。
「…衛藤?」
「…え、あ、だ、だって…つ、つつるん前に言ってたじゃん。私といるの、辛いって…だから私っ…」
…前に、千葉と話しているのを聞かれた時のことだろう。
「…あのさ、衛藤、その話どっから聞いてた?」
「え?どっからって…」
…そうか。俺は、衛藤があのとき、俺の気持ちを知って避けたのかと思ってた。でも、そうじゃなかったとしたら。
…本当、とんだ思い込みだ。
「…0点だな。俺も衛藤も」
「えっ…っ、!?」
グ、と衛藤の手を握る。衛藤が目を大きく見開いて俺を見た。