紡ぐ〜夫婦純愛物語〜
「この間来た、お客さんにお前の嫁に来てくれそうな人がいないか聞いたら、藤田屋の娘さんは若いのに良く働くし、賢いし、何より美人で評判だと教えてくれてな。藤田屋の旦那に話をすると藤田屋も、娘の嫁入り先を考えていた所らしくお互いにうまく話がまとまったんだよ。」

「どうして当事者である私に何の相談も無いんですか。」
あまりに淡々としている父に段々と怒りを覚え始め、声を低く聞いても、どうと言うことはなく父は変わらず淡々と、

「優作、お前はもう25だ。本来なら結婚など当にしていてもおかしくは無い年だ。それが、お前は薬の勉強をしたいからと結婚を先延ばしにして洋薬(西洋の薬の事)の勉強をしたんだ。このまま放って置いたらお前は私達に孫の顔を見せずに死なすつもりだと、思っていたんだ。」

「だとしても、勝手に話をすすめるなんて酷いでは無いですか。」
私が父に食ってかかると、母が間に入った。

「優作。あちらさんから、もう、お返事は頂いてますよ。あちらの娘さんは16と貴方より一回りも年下であるにもかかわらず、お父上の決められたことならと承諾されたそうよ。」
意味ありげに、湯呑みに注がれたお茶を見ながら私にそう、告げた。
 
「何が、言いたいんですかお母さん。」
私がきくと、母は私を見上げながらニコリと笑った。

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