恋愛初心者です、お手柔らかに?
歩いて行けるスーパーに向かった私達。
握られたその手を見ながら私は、これが、もしかしてらまだ夢なんじゃないかと、空いた手で自分の頬をつねっていた。

「…っ、痛い…」

「何やってんの?」

「え、あ…」

「もしかして、まだ夢だとか思ってる?夢じゃないから」

「や、やだな。そんな事思ってる訳ないじゃん。まだ目が覚めてないのかボーっとしてるから、目を覚まそうとしただけじゃない」

苦し紛れの言い訳をしてみる。
そんな言い訳なんて、通じる訳もなく。

「絢って、ほんとに会社と全然違うよね」

「…っ、ダメな感じ?」

会社の時と違うと言われ、撃沈寸前。
やっぱそうよね…会社じゃ、私に任せて!ってやってるし。
デキるオンナって思われてたのかな。

ぶつぶつと独り言を言っていると、握られた手に力が入った。

「そんなギャップもまた可愛けどね。別に仕事出来るから、好きになったんじゃないよ?そこ違うから」

私の心の声が漏れたのか、齋藤君は私に言った。

ば、ばれてる。

付き合うってこんな感じなのかな。
初めて過ぎて、私にはどう対処したらいいのか、頭の中は混乱していた。

「それよか、早く悠って呼べるようになってね?わかった?」

「えぇっ!急がせる?もう!」

「ゆっくりでいいけど、慣れてくれないと俺が困るし」

まだ頭の中は混乱中だったけれど、齋藤君の優しさが伝わってきた。

どっちが年上なんだか。
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