君と僕のキセキ

 静かで人気(ひとけ)がない、森のような一画を抜けると、大学構内の端にたどり着く。



 上から見ると台形のような形をしたキャンパスの、四隅のうちの一つ。二方向を柵に囲まれた一角。

 そこには、木製の古びた小屋が一軒、ぽつんと建っていた。



 かなり前に建てられたものらしく、ボロボロで汚い。変色した板が、今にも剥がれ落ちてしまいそうだった。



 建付けの悪いドアを開けて中に入る。

 床面積は六畳ほど。天井は低く、一七〇センチもない僕ですらつま先立ちをして手を伸ばせば届いてしまう。電気はないが、窓からは適度に日光が入ってきている。



 僕が大学一年生の終わり頃に見つけた、お気に入りのスペースだった。構内を散策していて偶然発見した場所である。



 床には、実験装置らしき大きな機械や、何かを分解して出てきたようなガラクタが散乱している。そのいずれにも、埃がうっすら積もっていた。

 昔、どこかの研究室が、倉庫として使用していたものなのだろう。



 極端に暑かったり寒かったりする日や、雨の降っている日以外は、僕はほとんどこの場所で昼食を食べている。



 今のところ、食事中に誰かが入って来たこともなければ、僕以外の誰かが使った形跡もない。そもそもこの辺りに有用な施設はなく、誰も近づかないのだ。

 つまりこの小屋は、僕専用の昼食スペースとなっている。
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