【短】あなたが見えない
「おい、美依。俺、帰るわ」

「え…?敬太?ちょっと待ってよー?」

「待ってんのだりぃんだよ。お前はさっさと日直の仕事終わらせな」

「……」


人の気持ちなんて、これっぽっちもお構いなしに、敬太は取り巻きを連れて教室の外へ出ていってしまった。
私は、心の底から深い深いため息を吐く。
まだ、教室にはまばらに人がいたから、やらなかったものの。
もし誰もいなかったら、近くにある椅子を蹴り飛ばし、持っていたシャーペンをバキバキに折っていたかもしれない。


「…もう、ほんと頭きた。今度こそ、別れてやる!」


私と敬太の間は、もうかなり冷え込んでいると思う。
まぁ、付き合いだして二年もすれば、そんなものなのかもしれないけれど。


でも、だからって、最近の敬太の私の対する扱いはとても酷くて。
いくらなんでも、私だって人形じゃないんだから、傷付かないわけがない。
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