銘柄




――――――――――――…



「で?」

「………、」

「お前の目から見たらコイツは女な訳か、あ?」



所変わって自宅、ちなみに私の部屋。

鬼のような形相で此方を睨む男に苦笑を零しつつ、内心思い切り舌打ちをお見舞いしてやる。





「う、嘘は吐いてないでしょ……美人さんなんだから」


なんだって私が兄貴なんかに気を遣わなきゃならないんだ。






と、そのとき。


「すんませ、新《あらた》さ――」

「おいこらァ!!っと悪い、手が滑った」



「兄貴いいいいい!!」



手が滑った、なんて零しながら彼の後頭部を思い切り殴った奴に目が飛び出るかと思った。

透かさず奴の手をお兄さんから遠ざけた私は、額に冷や汗を浮かべながら言葉を落とす。






「ちょっと!本当!病人!分かってる!?」

「お前、なんか片言だぞ」

「お前の所為じゃボケェ!」


兄貴が彼を殴ったことばかりに気を取られていた私は、暗黙の内に二人が意志の疎通を済ませたことに気付いていなかった。




だって、お兄さんは兄貴とは初対面。

名前なんて知る筈もないのに――、





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