カラフル
「けどなんかこれ、長さ足りなくない?」


順がほくほく顔で紙袋から取り出した布団はコタツ用ではなく、普通に寝具用のかけ布団だったので、四つのうちの一面がガラ空きになった。
これじゃあ暖気が逃げてく逃げてく。

天板はまあ、ちょっと汚れはあったけど手持ちの洗剤やマイ雑巾でごしごし拭いたら綺麗になった。が、一本の脚のネジが緩んでて、回せど回せどしっかりカチッとハマらない。


「脚がいかれてる……」
「なー。こういうのなんて言うんだっけ」


諦めて立ち上がったわたしに代わり、呑気な声で言った順が脚を持ちチャレンジする。


「うーんと、割れ鍋に綴じ蓋?」
「それ、似た者夫婦に使うことわざだよ」
「え。そーなの?」


順は首を傾げた。
わたしは押入れを開け、布団の下からインド綿のブランケットを引っ張り出す。
広げてみると少し湿気ってた。

順が買ってきた寝具用の布団にグレーのカバーを付けてずらして重ね、なんとか四方向全部を覆うことができた。

テーブルタップがいっぱいなので仕方なく電気ストーブに場所を譲ってもらうことにして、コンセントを差しスイッチを入れると、コタツのなかはじんわり赤くなった。


「おー、めっちゃいい! 超あったけー」


わたしがこれまで使ってたテーブルをたたみ、押入れのすき間に押し込んでいるうちに順は、二つ折りにした座布団を枕にしてコタツに入り、すっかり満喫している。


「順、コタツで寝たら風邪ひくよ」
「えー、これで寝るなって方が無理があるって。ホカホカして気持ちいいから勝手にまぶたが重くなるし」
「へー」
「睡眠欲は本能だからな」
「じゃあその本能に逆らうしかないね」
「おう、まさに本能寺の戦い」


くだらん。

わたしは順のはす向かいに座る。
控えめな動きで足を差し込んだのは、なんの相談もなく勝手にこんな大きなものを貰ってきたことに対する反抗。

冷え切っていたつま先に熱があたって、じんじん温まってくる。


「もっと強くしない?」両目を閉じ、順が言った。
「これ以上強くしたら火傷しないかな」


わたしは布団をめくってなかを覗き、調節のつまみが中度を指していることを確認する。
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