わたしを光へ。


有無を言わさぬ視線に私は黙って抱かれるしかなかった。


それにしても、この人は有名人なのか。


通り過ぎるまでに何人ものこちらを見る女生徒の姿。


その人たちは彼の名前を呼んでいるように見える。


見上げて彼の顔を見ると確かに整った顔をしている。


だからか、と納得した。



そもそもお姫様抱っこされている、という異様な光景に皆んなの視線は集まっているんだろうけど。


「着いた。先生ー、はいないみたいだな」


彼は私を椅子に座らせ、先生の代わりに手当をしてくれた。


「名前、なんていうの?」


「相澤洸」


「相澤くん、手当上手なんだね。手慣れてる」


「まあ、よくやるからな」


相澤くんは手当してくれている私の足から目を離すことなく言った。


そして最後にテープを貼って終えた手当は丁寧で、よくやるというのは本当なんだろう。


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