無愛想な同期の甘やかな恋情
一度躊躇ってから、彼の白衣をきゅっと掴んだ。


「穂高君。違うの。この企画は、間中さんと一緒にやりたいんじゃなくて」


今言っても、言い訳にしか聞こえないだろうとわかっていても、黙ったままでいたら、一夜にして頑強な壁が築かれてしまいそうだ。
だから私は、なんとか聞いてもらおうとして、言い募った。


「間中さんのこと考えて、どっか行ってるような状態で、他の商品の企画進めながら『AQUA SILK』の新商品も考えるなんて無理だろ」


だけど穂高君は、私に最後まで言わせてくれず、そう言い捨てる。


「俺が一緒に創り出してやれる魔法のアイテムじゃ足りないなら、その企画、続けろ」


その言葉に、はっきりとした拒絶を感じて、私は声を失った。


「……俺、ちょっと頭冷やしてくる」


彼は、サラッと前髪を掻き上げてから、俯いた。


「しばらく空けるから、俺が戻ってくるまでに帰って」

「っ、穂高く……」


私が呼ぶのも聞かずに、穂高君は大きな歩幅で、足音を響かせて研究室を横切っていく。
一度も私を振り返らずに、そのまま出て行ってしまった。
一人、研究室に取り残された私は、彼に突き返されたクリアファイルを手に、呆然と立ち尽くすだけだった。
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