一目惚れの彼女は人の妻
 その出版社に斎藤さんは何度か来ているはずだが、俺は今日が初めてだ。

 受付前のロビーには、実際に開発を担当する協力会社の男性二人が既に来ていて、組むのは初めてなので名刺を交わした。それから受付をし、エレベーターに乗り込み、受付嬢に案内された会議室へ向かった。

 斎藤さんに続いて会議室に入ると、白い壁を背にして3人ほどが立っていた。たぶんこの会社の人だと思う。右から男、男、女なのだが……

 その瞬間、俺は心臓が止まるのではないかと思った。なぜなら、ビジネススーツがバッチリ似合い、ややショートの黒髪は艶やかで、黒縁の眼鏡を掛けた、お堅いイメージのその女性こそ、俺の憧れの人、ヒロミさんその人だからだ。

 記憶が薄れているから、断言は出来ない、と思ったのだが、向こうも俺を見て目を大きく見開いてるから、人違いではないと思う。

 と言うか、たった一度会っただけなのに、ヒロミさんも俺を憶えてくれていたと思われ、嬉しい。嬉し過ぎる……

 斎藤さんに肘で小突かれるまで、俺とヒロミさんは見つめ合っていた。
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