あなたの隣で ~短編集~
気が荒そうなあなたが苦手だった。


教室の隅で静かに本を読む私は、いつもあなたにビクビクしていた。


 
 ある日の下校中。


律くんが私の前を歩いているのが見えて、私は何となく距離をとって歩いていた。


私に気づきませんように……。


少しすると向こうから小さな男の子が走ってきて、律くんの目の前で転んだ。


律くんは大声で泣き出す男の子を見つめていた。


私は、彼が機嫌を悪くすると思っていた。


ところが、律くんは、


「おぶってやるから泣くなよ」


そう言って男の子を背負って、家に送ってあげようと歩き出した。


律くんはこちらの方に歩いてきて、思わず立ち止まっていた私にちらりと目をやった。


目が会った瞬間、彼の頬にほんのり赤みがさしたのが見えた。



 あの日、私にとっての律くんは180度変わった。


怖そうで、とても近づくことなんてできなかった律くん。


だけど本当のあなたはとっても優しくて、頼れる人だった。


私、そんなあなたに恋をしました。
< 16 / 33 >

この作品をシェア

pagetop