あなたの隣で ~短編集~
次の日。


俺はひとつの封筒を持って下駄箱に向かった。


昨日の話を聞いて、赤く染まった顔を見たら、遊びじゃないかとずっと疑っていたことがなんだか恥ずかしくなった。


あの言葉に嘘はないだろう。


だから、俺の答えは決まった。


〈お手紙ありがとう。立ち聞きなんかしてごめんね。でも、酒井があの時助けた子だったなんて思わなかった。俺のこと、覚えていてくれて、好きになってくれてありがとう。好きです。俺の彼女になってください。泉〉

  *

 助けてくれた男子と同じクラスになれた。


私はその時すでに泉くんを好きになっていて、あの時のお礼を口実に彼と話したいと思っていた。


でも、泉くんはあれが私だと気づいていないようだった。


泉くん、お礼が遅くなってごめんね。


「あの時、助けてくれてありがとう」


今度は、私が君を助けさせてね。
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