あなたの隣で ~短編集~
私の隣の席の男子は葵。


男の子だけどどこかふわふわしていて、こんなこと言ったら怒られちゃうけど、葵って可愛いんだよね。


「仁和(にいな)ちゃん、チョコいる?」


葵はいつも何かのお菓子を持っていて、私にも分けてくれる。


葵はすっごく親しみやすいから、男子が苦手な私でも仲良くなれた。


いつもニコニコしてるし、なんだか犬みたいだなあ。


 下校中。


私はいかにも不良そうな男の先輩に声をかけられた。


「俺とどっか行かない?」


これってナンパってやつ?


私は震えながら固まってしまった。


助けを求めようにも周りに人なんていない。


このまま連れていかれると思ったその時。


「何してるんですか」


低い声が聞こえて、声がした方を見ると葵が立っていた。


今の……葵の声?


いつもと全然違う声だった。


それに、いつもの葵のふわふわした感じがまったくしない。


その代わりにものすごくピリピリした空気をまとっていた。
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