恋する耳たぶ
知らない人間(容姿、性格、生活環境などがお互いの理想に近い独身、もしくはフリーの、恋愛対象性別の合った者)同士が。
ある場所で(同時刻に居合わせ)ふいに出会い、(ほぼ同時に特別な好意を持って)恋に落ち。
(連絡先等を交換し、現住所等を確認した後、問題のない距離であるなら、後日、会って楽しい時間を過ごせるかどうかを確認し)幸せなリア充生活に突入する……
この他にも、たくさんの前提をクリアした上でないと起こりえない奇跡だと思うのだが。
世の中の人間は、俺の知らないところで、そんな難関を何度もクリアして奇跡の恩恵を受けているのか。
どこか、遠い世界のおとぎ話を聞いているようだ。
というか、そんなことがそうそうあってたまるか。
「運命って、そういうものなんだよ」
頬を染め、夢見心地の様子で言う上司がちょっと……いや、かなり気持ち悪いと思ったが、大人な社会人である俺はあえて口にはしなかった。
思いもかけない時に予期せぬことが起きる。
そういうことなら、俺にもわかる。
例えば……今。
よく晴れた休日の朝っぱらから、俺が高速バスの停留所に立っている理由がそのひとつだ。