人魚姫の涙
一通り部室の中を見回して、近くにあったソファに腰かけた。

誰もいない部屋。

窓の外からはセミの声だけが聞こえる。

儚い一夏の命。


夏は心を熱くさせるけど、同時に何か虚しさを感じる季節でもある。

どこか祭りの後に似ている。

楽しかった後の喪失感。

何もかも終わってしまって、目指すモノがなくなった時の、あの何とも言えない気持ちに似ている。


夏はあまり好きじゃない。

なんだか自分がちっぽけに見えるから。


だけど、その夏も、もうすぐ終わる。

訪れるのは、世界が赤と黄色に染まる世界。

鮮やかな、秋。
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