人魚姫の涙
えっと...…と動揺する俺とは違い、真剣な顔で詰め寄ってくる紗羅。
「言って」
「わ、分かったよ」
「いつから?」
「ん~...…紗羅と再会して、一緒の時間を過ごしていくうちに気が付いたら紗羅ばっかり見てた...…かな」
紗羅は俺にとっては妹みたいな存在で、思い出の中の泣き虫の女の子だった。
だけど、再会してその真っ直ぐな笑顔と心に知らないうちに惹かれていた。
気が付けば、紗羅の姿ばかり追いかけていた。
「再会したばっかりの頃は正直混乱してた。18年ぶりに会った幼馴染が、こんなに綺麗になってるとは思わなかったし」
「うん」
「でも、少しづつ昔の自分の感情を思い出した」
「昔の感情?」
「紗羅は俺の初恋だった」
「――」
「一緒にいるのが当たり前だった、あの時。紗羅がイタリアへ行ってしまってから、寂しくて寂しくて、紗羅に会いたくてしかたなかった」
思い出した事がある。
紗羅がいなくなってから、俺は毎日あの堤防で紗羅を待った。
もしかしたら、帰ってくるんじゃないかって、そう思って。
自分の体の一部が消えたような感覚だった。
自分が自分じゃなくなったような気持ちだった。
幼い頃の俺にとって、それは耐えがたい感情だった。