人魚姫の涙
「紗羅」


私を抱きしめていた成也が、耳元で囁くように私の名前を呼んだ。

ゆっくり顔を上げると、優しく微笑む成也がいた。

頬を流れる涙をゆっくりと指で拭ってくれた。


「紗羅……成也」


すると、パパの低い声が部屋に静かに響いた。

成也と2人、声のする方へ顔を向ける。

そこには、真剣な顔をしたパパとおばさんがこっちを見つめていた。


「……離れなさい」

「――」

「お前たちは兄妹なんだ」


最初はためらいがちに。

でも、最後の言葉は強く告げられた。


まるで警告するかの様に。

威嚇する様に。

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