人魚姫の涙
『寝かけてた。何? なんかあったのか?』


勘の鋭い和志は、そう言って会話の流れを作ってくれる。

こんな時間に俺から電話する事なんて滅多にない事だから。


「ちょっとな。なぁ、悪いんだけど迎えに来てくれないか」

『――は? どこに?』

「場所はメールする」


俺の訳の分からない突然の頼みに、しばらく無言の和志。

それでも、長い付き合いだ。

俺に何かあったと感じ取ってくれた。


『――今向かう』


短くそう言って、電話を切った和志。

すると、横で聞いていた紗羅が首を傾げて訪ねてきた。


「和志くん?」

「あぁ」


猫みたいに寄り添う紗羅の頭を優しく撫でる。

ギュッと互いの手を握って、離れまいとする。
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