人魚姫の涙
「何を?」

「あれを」

「あれ?」

「マサーキーが拾ってくれたヤツ!」


真面目な顔して、雅樹をアメリカンな呼び方で呼ぶ紗羅に思わず吹き出した。

一気に俺の意識はそっちに流れて、集中力が切れた。


「ま、まさーきー。……ふっ」

「憶えてないの?」


紗羅は、じっとりとした目で肩を震わせる俺を見つめる。

真面目なのか天然なのか分からない。

笑いを押し込めて必死に考えるが、集中力が切れた頭では答えなんて導き出せない。

再び笑いの神が降りてきて吹き出した俺に、紗羅は拗ねたようにバシバシと俺の体を叩いた。


「忘れたんだ! 成也のばかぁ!!」

「ちょ、思い出せそうなんだって」

「だったら、早く思い出してよ!」

「そんな直ぐ思い出せねーって」

「じゃぁ、思い出したら言って!」

「今は無理...…ふっ」

「成也の、ばかぁ!!」


結局、ウロコの事は思い出せなかったけど、なんだかあの頃に戻ったみたいだった。
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