人魚姫の涙
◇◆◇


「成也~~!!」


講義が終わって学校を後にしようとした時、不意に誰かに呼ばれた。

反射的に振り返ると、笑顔で大きく手を振りながら近づいてくる人が見えた。


「友香」

「今から帰るとこ?」

「あぁ」

「じゃぁ、一緒に帰ろ?」

「あぁ」


無邪気に微笑む友香を見て、また胸が痛む。

隣に並ぶように立って、頬を染めながら俺を見上げた。


オレンジ色に照らされたその姿から目を逸らす。

友香を騙している様な気持ちになって、見ていられなかったからだ。

もちろんそんな俺の姿に気づいて、友香は不思議そうに俺の顔を覗きこんだ。


「成也?」

「なに?」

「何かあった?」


少しハニかんだ笑顔で、そう言う友香。

伺うように俺の表情を見つめている。
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