ノンフィクションにご注意を
最後のセリフは溝渕にというより、自分自身に言い聞かせる様に言った言葉だった。


しかし溝渕はそれに気づく事無く、「時間とらせてごめんね?教室戻ろっか」とルンルンしながら教材室を出て行く。


オレは一瞬だけ目を閉じて、再び溝渕の後を追いかけた。


これでいい。これでいいんだ。


オレさえ何も言わなければ、皆が幸せになれる。


オレはこれから“兄”として、溝渕を守っていけばいい――――…


――――パタン


知早が踊り場で何を言いたかったのかも知らずに、溝渕への恋心を封印するかの様に、しっかりと教材室の引き戸を閉めた。
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