危ナイ隣人
パパとママが帰ってきたら、ケーキを食べながら聞いてもらうんだ。

お兄ちゃんと遊んだこととか、私が割るのを失敗して、それでも作り上げたオムライスの味とか。



そう、思っていたんだけど。



──プルル……

リビングのダイニングテーブルに置かれていたスマホが着信を報せて、当時ハマってたボードゲームをしていた手を止めたお兄ちゃんは電話に出た。


少し話し込んだ後電話を切ったお兄ちゃんは、眉をハの字にして、本当に申し訳なさそうな顔で私の頭を撫でた。



「ごめん、茜。兄ちゃん、ちょっと用事出来ちゃったから、出掛けてくる」


「えぇ〜! 今日は一緒に遊ぶってやくそくしたのに!」


「ほんとごめん。今度、改めてちゃんと時間作るから」



サッカー部だったお兄ちゃんは、中高と部活に勤しんで忙しかった。

大学生になったお兄ちゃんは、片道2時間の通学時間を嘆きながら、それでもサッカーのサークルに入ったりして謳歌していた。


他にもバイトなんかでなかなか時間のとれないお兄ちゃんとの休日が、突然の電話によって打ち壊された気がして、なんだかとってもくやしかった。


だからスナオに頷けなかった私を、お兄ちゃんは少しだけ困った顔をして、それから抱き締めてくれたんだ。



「兄ちゃんも茜と遊んでたかったよ。ごめんな」



でも行かなきゃならないんだ。

そう言って、お兄ちゃんは私から離れた。
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