危ナイ隣人
「わかりました」


「ごめんね。じゃあ、またね」



ひらひらと手を振って、京香さんが河川敷を足早に歩き始めた。


その背筋の伸びた背中を、夕日がオレンジに染めている。



「…………」



強い風が吹いた。

私のウェーブのかかった髪と、京香さんのサラサラの髪が夕日に向かって靡く。



「京香さん!」



気付けば、私を呼んだ彼女に負けないくらいの声量で、京香さんの名前を叫んでいた。


随分先まで歩いていっていた京香さんは、ヒールを鳴らすのをやめ、体を半分だけ翻させる。

西日を背にした形だ。



「兄は……御山圭太は! 京香さんにとって、どんな人でしたか!?」



私の張り上げた声を受け取った京香さんの動きが止まった。


それも束の間。



「一生忘れられないって本気で思うくらい、大好きな人だったよ!」



いつもの元気な、だけど少しの哀愁を帯びた声で叫び返して、今度こそ京香さんは道の向こうに姿を消した。



誰そ彼。


ほんと、よく言ったもんだよ。

ねぇ、お兄ちゃん。



ナオくんとお兄ちゃん。


私は、私の大切なあなた達のことを、重ねた時間を、ちゃんと知りたい。





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