危ナイ隣人

甘イ束縛

「受験勉強があることは承知の上ですが……多数決の結果、うちのクラスの出し物は劇になりました!」


「役は、公平にくじ引きで決めたいと思いまーす!」



……なんて発表があったのは、先月の初め、2学期の始業式が行われた日。


あれからもうすぐ3週間。

不本意ながら……それはもう、大変不本意ながら、私は劇の練習に勤しんでいた。




「“ここの生活はつまらないわ。ダンスのレッスンをするより、森で木の実を拾う方がずっと楽しい”」


「“そうですか”」


「“セティ。私はどうして、ここに連れてこられて”……」


「カーット!」



教室の中に、監督……もとい、クラスメートの宮城さんの声が響き渡る。



「塚田くん、もぉーーー少し感情込めて言えない? それじゃ、木の実を拾うのも楽しくなさそうだよー」



指摘された塚田くんは、台本を片手に渋い表情を浮かべている。


何か言いたげにしつつも、飲み込んでしまうところが彼らしい。



「今日はこれくらいにしない? もうすぐ6時になっちゃうよ」


「あ、もうそんな時間かー。じゃ、続きは明日にしよっか!」



解散が言い渡されて、向き合っていた私と塚田くんがほっと一息ついたのはほぼ同時だった。


自席に戻り、鞄を回収して、自然な流れで教室を一緒に出る。



「……文化祭って、こんなに大変なものだったんだね」


「いや、今年がおかしいと思う」
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