危ナイ隣人

掛ケガエナイ時間

霜月にも師走にも逃げられ、あっという間に年が明けました。



「茜ー。もう12時前だぞ」


「ん……あともうちょっと。このページ終わったら、休憩する」


「休憩って……あんま根詰めすぎんなよー」



背後で、ソファーに寝そべって競馬新聞を読んでいたナオくんから声がかかる。


んー、と気のない返事を返すと、403号室には再び沈黙が訪れた。



年が明けて早1週間。ニューイヤー気分もそこそこに、私は日々机に向かって勉強に励んでいる。


あと1週間ほどすると、大学の共通テストがある。

担任の先生やお父さんお母さんと話し合って、ナオくんや京香さんにも相談に乗ってもらって、受ける大学と方式を決めた。



大学共通テスト利用を受けて、ダメだったら一般入試。

一応他の大学も受けるつもりだけど、あくまでも本命はR大だ。



「ふぅ」


「終わった?」



私が息をついてシャーペンを投げ出すと、上半身だけ起き上がったナオくんがこちらを覗き込んでくる。


首と肩をゆっくり回してほぐしながら、半身だけ振り返った。



「とりあえずひと段落」


「お疲れ。ココア飲むか?」


「うん、欲しい」



私が頷くと、競馬新聞をバサッとソファーに投げてナオくんがキッチンへと立つ。


スウェットに厚手の黒いパーカー。いつもよりもフォルムがもこもこしてて、なんだかちょっとかわいい。



立ち上がって後を追うと、ナオくんは一瞬視線をこちらに寄越して、小さく笑った。
< 392 / 437 >

この作品をシェア

pagetop