アホほど美少女が転校してきた話


 え、なにこのラノベ展開。ラノベ席だから? 私がラノベ席だからなの? 窓側の一番後ろの席だからなの?


 あか~ん、この美少女、ただでさえない私のボキャブラリを吸い取っていく~~~。


 こんなん可愛すぎて、は? しか言えねーよおおおおお!!



「あ、あのぉ……」



 転校生が心配そうに様子を伺ってくる。やべえなんか言わないと。とりあえず名前言わないと。


 え、でもいいの? 私の名前なんて聞いてもなにも得しなくない? めっちゃ平凡な名前なんだけど。今すぐ千手観音ほとけとかに改名したいんだけど。


 よしっ、行け! 千手観音ほとけ……じゃなかった、中野加奈!



「アハ、アハハ、中野加奈でぇっす。上から読んでも下から読んでもなかのかなでぇっす。アハハ、チッスチッス」



 ムリ。終わった。失敗した。


 なんだこの自己紹介。きもっ。私もハサミで自害しようかな……。


 クラス中からなにやってんねんという視線が突き刺さる。私明日からいじめられるのかな……。


 でも待てよ、おまえらだって絶対私の立場になったらこうなってたって! この美少女のツボがなにかもわからんのに、いきなり笑いとろうとするのはハードル高いって!



「……ふふっ」



 ほら! もう! 転校生も笑い始めたー! どうすんのこれ? 誰が二番手になるのこれ? 知らない。私知らない。せめてこのままの雰囲気では終わらせないで?


 って、え!? 笑ってる!?



「ふふっ、中野さんって面白い人だね」



 えーーーーーーーーー? なんで笑いとれたのーーーーーーーーー?????


 まぁいいか。


 なんか知らんけどやったーーー!!

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