初恋をもう一度。【完】
小学校を卒業する頃になると、俺と兄貴はやっぱりよく似てはいたけど、外見も性格も、少しずつ違いが出てきた。
いちばんの違いは眼鏡。
俺はゲームをやり過ぎたせいか少し視力が落ちてきて、眼鏡をかけるようになった。
眼鏡をかけていれば、兄貴と間違えられることはほぼない。
まあ、そんな見えないわけじゃないから、授業中くらいしかかけなかったけど。
中学に入学した俺は、兄貴がいるサッカー部に入った。
先に兄貴が中学生になって、1年くらい一緒にサッカーできなかったから、また一緒にできるのが楽しみで仕方なかった。
兄貴はエースストライカーで、みんなから信頼されていた。
そんな兄貴がかっこよくて追いつきたくて、俺もサッカーに打ち込もうって決めた。
俺はとにかく兄貴が大好きで、兄貴はいつだって、俺の自慢だし、目標だった。
だけど、あくまで目標。
俺は俺。
俺が兄貴を羨ましいとか、兄貴自身になりたいと思ったことは、一度もなかったんだ。
彼女、奈々ちゃんに出会うまでは──。