僧侶とホストと若頭、3つの顔に揺れる恋
御勤めが終われば朝偈の支度をし、お稽古の用意を済ませ、丁寧に真摯にお稽古をこなし、小僧たちを指導する。

健気だなと思うと、多少の態度は目をつむってやろうと思うことにした。

数時間後。

本堂に姿を見せた悠斗は想像通り、いつもと変わらず凛としていた。

「凛子さん、おはようごさいます。お教本は畳の上に置かないよう」

きちんと正座して、あたしを見る。

あたしと目が合うなり顔を近づけ、あたしの耳元で囁いた。

廊下で話した時の香水の匂いは、石鹸の匂いに変わっていた。

整髪剤で立たせた髪は、自然な流れに戻っていた。

しなやかですらりとした体に纏った袈裟。

何処からどうみても僧侶にしか見えない。

どちらが本当の悠斗だろうと首を傾げる。

「凛子さん、住職がお見えになりますよ。姿勢を正しなさい」

スッキリした顔しちゃって、眠たいとかダリーイとかないのかよと、口に出して言いそうになる。
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