僧侶とホストと若頭、３つの顔に揺れる恋

どういった経緯だったのかは知らない。

恰幅のいい男が長身の男の背中をいきなり、斬りつけた。

長身の男は上半身、裸だったと思う。

日本刀は背中を左から右に、袈裟懸けに振り下ろされた。

背中全面に描かれた鮮やかな龍が血飛沫をあげた。

「只今を持って、貴様を破門する。二度と組の敷居を跨(また)ぐな」

無惨に切られた龍の瞳に一筋、伝わるものがあった。

涙のように見えた、それは切られた背中の痛みに耐えている男の冷や汗だったに違いない。

長身の男は懸命に、痛みを堪え、恰幅のいい男の後ろ姿を見送りながら意識を保っていた。

が、その姿が見えなくなると、うつ伏せにバッタリと倒れた。

俺はその光景を見ながら、声をあげることさえできず泣いていた。

ふいに、思い出してしまった。

「ーー悠斗……どうした？」

総長に言われるまで気づかなかった、自分の頬に涙が伝っていることに。