白雨の騎士
その頃、オーギストから逃げて来たアリスは王宮の温室にやって来た。


沢山の草花に囲まれた温室には大きな噴水もある。


あまり城の者たちは近寄らないが、アリスはちょくちょくこの場に訪れて、本を読んだり花を眺めたりしていた。


「…アリス様。」


花の手入れをしていた庭師のスーが声をかけた。


スーはまだ13歳だが、師匠のドラに教わりながら城の庭の手入れをしている。

よく温室を訪れるアリスとは仲が良かった。



「…スー、この花後で貰えないかな。」


「いいですよ。お部屋までお持ちします」


アリスは微笑み、美しく咲いた花をそっと撫でた。



「…ねぇ、スー。。誰かと結婚したいと思う?」


アリスの問いかけに、スーはポカンと首を傾げた。


「…結婚?考えたことないなぁ」


スーの答えにアリスはふふっと微笑んだ。


「私はね考えなきゃいけない歳らしいけど、とても考えられないの」


アリスはハーっと溜息をついた。


コンコン

すると、温室にメイドが入って来た。


「…アリス様、音楽会のお時間です。」
< 4 / 219 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop